推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
午後三時五分 浮田課長視点
**** 午後三時五分 浮田課長視点 **** 


 俺はあのお昼の出来事から、集中力が低下しているようだ。スマホで「同期は恋愛対象?」と検索してしまった。そして何故か西浦さんと田中の関係を想像しては落ち込んでいる。同期というものは繋がりの太いもので、入社してからの泊まりがけの研修や飲み会なので仲を深めていく。同期同士の結婚もよくあることだ。
 

「すっかりと見落としていた。そうか田中が居たか……」
 

 西浦さんは冷たそうな外見の所為で、男子社員からは「怖そう」と避けられている様子だったのだ。このご時世でも平気でセクハラ発言をする上層部からも、「彼女には注意」と発言に気を付けて声を掛けられている。だからこそ、悪い虫はいないと思っていたが……。そうだ、田中は天然だ。きっとズケズケと西浦さんのプライベートに踏み入っていくのだろう。くぅ……、羨ましい!
 

「浮田課長、M社の見積書なのですが。私が作成しました物で大丈夫なのかご確認頂けますか? 課長に指摘された場所は変更していますが……」
 
「え? M社……? あ、ごめん! 今からやります……」
 

 しまった! すっかりと忘れていた。M社は何かと面倒な取引先だというのに。ああ、西浦さんが冷たい目で俺を見ている。その視線で身体が火照っていくのがわかる。駄目だ! あの視線は俺だけのものにしないと……。

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