推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
就業後の二人① 浮田課長視点
**** 就業後の二人① 浮田課長視点 ****


「大丈夫だから……。俺がちゃんと家まで付いていく」
 

 俺は不安そうな西浦さんに優しく声をかけた。だけれども彼女は返事をしない。余っ程気分が悪いのだろうか? しかしタクシーの中は狭い。西浦さんの脚が俺の脚に触れているのだが……。


「課長、近いです……」

「え? ごめん。でも辛いだろうから俺にもたれて良いんだよ、ほら……」


 俺は西浦さんの身体をグッと引き寄せて、勢い余って胸元へと押しつけてしまった。ど、どうしよう……。俺の速い鼓動がバレてしまうじゃないか!
 

「浮田課長には田中君が――」

「え? 田中? どうして今、田中の名前が――」


 俺は西浦さんが田中を気にしているのが分かった。それは何だか気分の良いものではなく、あからさまにムッとした顔をしたかも知れない。
 

 何か話そうと思っても、気の利いた事が浮かばなく、しかも田中の事を聞き出そうとしたくなるので、俺は車内ではその後一言も話さなかった。するとタクシーは静かに西浦さんのマンションの前に停車した。


「お釣りはいいです。ありがとうございます」


 料金を運転手に払った俺は、彼女をグッと支えるようにしてタクシーから降りる。自然と腰に手を回す。西浦さんの腰は細くヒップは丸い……。これはボンテージビスチェが似合う体型だ。
 
 
「……部屋は何階?」

「さ、三階です」

「分かった」


 二人でエレベーターに乗り三階へと行く。二人の足音が夜の薄暗い廊下に響いていた。そして部屋の前に来たときに、俺は西浦さんに部屋の鍵を渡して貰う。
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