白井 花太郎と真冬の帰り道しましょ。【完】
軽音部に所属する私は今日も今日とて七割を雑談で過ごしてしまった部活動のあと、一人寂しく真冬の帰路についていた。
不安定な雪道で、たまに薄っすら張っていた氷に体の重心を奪われるもなんとかバランスを取り戻し前進を続ける。

北海道の冬というのはつくづく堪えるものがあった。
冬より断然夏派な私は寒いのがてんで苦手なので、毎年この季節は酷く憂鬱にさせられるのだ。
雪が降ったら犬は喜んで庭を駆け回るらしいが、ならば私はコタツで丸くなる猫でいたい。

将来は道民をやめて、少しでも温かい気候の場所に移住したいな、なんて考えながらなんとなく視線を移動させた先に映った、ここら田舎じゃ希少価値の高いコンビニ。
出入口の上に立てかけてある、おでん全品半額というなんとも太っ腹な広告ののれんに、吸いこまれるように私はコンビニとの距離を詰めていた。
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