婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ドリー、ドリーはいる?」

「いるよ」

急いで部屋を出て、招かれるままドリーの部屋へ入った。


「水晶がおかしいの」

「ほおう。おかしいとは?」

困惑する私とは逆に、ドリーはなんだか楽しそうに瞳を光らせた。


「私、何も念じていなかったのに、勝手に見えはじめて……」

私の話を聞きながら、〝ほお、ほお〟と相槌を打つドリー。その落ち着きぶりが、すごくもどかしい。


「どれぐらい先のことか……」

未だに見える映像に目を凝らす。


「外の木々の様子は、今と変わらないようね。それなら、そんなに遠くないことだと思うの。このお店に、グリージア王国の王太子……アルフレッド殿下が来るの」

「へえ」


特に驚くこともなく、呑気に返すドリー。
一国の王太子が、しかも、私の元婚約者が来るっていうのに、どうして落ち着いていられるのか?

アルフレッドは、なんのためにここへ来るのか?
頭の中を、疑問ばかりがぐるぐると駆け巡る。




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