婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ちょっ、ちょっと待って。それは私じゃないわ」

唖然としたルーカスを横目に、ここだけは譲れないと言い返す。

「3年の、付き合い……」

それでも、私の言葉なんてもはや聞こえていないルーカスは、すっかり沈んでしまった。
対するアルフレッドは、満足げに彼を見下ろしている。なんて子どもっぽい……


「ルーカス、この人の婚約事情はともかく、グリージアでは婚前交渉は認められてないわ。たとえ長らく婚約していたもの同士でも、清い付き合いを貫き通す国よ」

暗に、深い関係にないことを仄めかせば「そうなのか?」と、途端に目を輝かす始末。特に彼を元気付けるつもりはなかったけれど……

「ええ。それに、それほど長く付き合った方と、未だに結婚せず……それどころか、私が婚約者に似ているからって、こんな所まで追いかけてくるぐらいよ。きっと、お相手の方は逃げ出しちゃったのよ。この人がなにかやらかして」

苦い顔をするアルフレッドを、ニヤリと見遣る。少しはせいせいするというもの。



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