白いジャージ ~先生と私~
 
「おっはよぅ!!!」



寒そうに背中を丸めた先生が家の前で待ってる。


先生の5人乗りの車に乗り込み、お姉ちゃん持参のCDを聴く。


「何年ぶり?私、直と出かけるの・・」

思い出せるのは、小学校のディズニーランドへの旅行・・以来かな?


助手席に座ってるのは

なぜか

私じゃなく お父さん。


体の大きさで決まったこの席だけど、

後ろから見る先生は初めてで

また新鮮だったんだ。


後頭部のちょっとくせのある髪も、ミラー越しに見える目も・・



「ねぇ、新垣~!CD替えて!!」


「これ!先生と言いなさい!」


お母さんはお姉ちゃんのひざを叩く。

「ねぇ、先生って呼ぶと怪しくない?あだ名考えようよ!」

お姉ちゃんは、まるで小さな子供のようにはしゃいでた。


お父さんの考えたあだ名は最悪だった。

『かずヤン』

・・・・誰・・??って感じ。

お母さんは

『かずちゃん』

これも、近所の子供みたい。

お姉ちゃんは、

『あらがっきー』

そのままじゃんと、先生に突っ込まれてた。


私は、心の中では『かずと』って呼びたかったんだ。


でも、恥ずかしくて言えない私がとっさに言ったのは、

『かーくん』



爆笑された。


だって・・・いいじゃん・・

先生は、小さい頃そう呼ばれてた~って笑った。


結局、なんの工夫もない『かずとくん』に決定した。


無理して何度も連呼するお父さんが面白くて

後部座席で笑ってばかりいた。
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