教えて、春日井くん


「……違うし俺中学生男子違うし」

「お兄ちゃんが女の子の前でリードしてる想像がつかないよ」

「やめて想像しないで。綺梨は本当とんでもない変態だよ!」

私よりも、兄の方が優しいし、かわいい性格をしていると思う。もしかしたら春日井くんと性格が合うのではないだろうか。



「俺は心配だよ。そんなことばっかり言ってると綺梨に彼氏ができないんじゃないかって」

「大丈夫。できたの!」

「え」

「彼氏、できたって報告し忘れてたなって」

兄の周りの時が止まっている。かなりの衝撃らしい。
視線を泳がせたあと、少し考えるように腕を組んでから、こてんと首を傾げた。


「ほ、本の中にいるとか?」

「生身の人間だよ」

妹をなんだと思っているのだろう。私にそこまでの妄想癖はないのに。
兄は話すとちょっとなよっとしている。それに趣味もどちらかと言えば乙女趣味だ。

親の会社がコスメ関係だからということもあるのかもしれないけれど、コスメに興味があるらしい。

普段は女友達でメイクの練習をさせてもらっているらしいけれど、私も時々実験台にされる。



「綺梨、ウブとか彼氏にいっちゃダメだよ。男は繊細なんだから」

「え……」

どうしよう思いっきり言ってる。タイムリープしたいとか言ってる。ウブ男子とか言ってるよ!?

青ざめていく私に気づいたのか、兄が顔を引きつらせていく。


「振られる前に、もう一度惚れさせないと」

「私が振られることになってるけど、なんで……!?」

「男は繊細な生き物だからだよ!」


飛び起きた兄はすぐに準備をして、私に久々にフルメイクをすると張り切っていた。



「時間大丈夫なの?」

「なんとかする! 綺梨が振られるかどうかの一大事だから!」

「……一大事になっているのはお兄ちゃんの中だけだよ! 順調だもん!」

そう訴えても兄は信じてくれず、どうやら私はいつもとは違う雰囲気のメイクにして、春日井くんをもう一度惚れさせないといけないらしい。





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