教えて、春日井くん



女子中学生が危険そうなのは分かり、とにかく助けなくてはいけないと焦る。

相手は大人なので、力で負けるかもしれない。
そう思った私は、近くにあった木の枝を持っておっさんに向かっていく。


ちょっとかっこつけて『やめなさい!』とヒーロー風に現れた私を見た、おっさんは呆然と私を見つめてくる。


すると拳を握っていた女子中学生——まほこちゃんは隙を見ておっさんを殴り、私の手をとって駆け出す。

むしろ私の方が助けられたような形になったものの、これが私たちの素敵な出会いだった。



「話聞いてんの!?」

「あ、ごめんね。まほこちゃんとの素敵な出会いを思い返してたの」

「ああ……自ら餌になって飛び込んできたアレね」

餌とはなんだと私が聞くと、まほこちゃんが電話越しにため息を吐く。


「変態のおっさんだってわかってて、その顔面で飛び込んでくるくらいなら警察呼んできてくれって思ったわ」

「家出中の身だったから、警察に見つかるわけにいかなくて……」

「御上家の家出捜索が大規模すぎるんだよ。怖いっつーの」

そう、あのとき家出をした私を我が家はあらゆる力を駆使して捜索していたらしい。おそるべし、母の力。


私の母はマトリョーシカ並みに厳重な箱入り娘なため、限度を知らないのだ。たった数時間の家出でも警察に連絡するレベル。そういうのに時折うんざりもしていた。


「でもあの出会いがあったから、私はまほこちゃんと出会って、初々シリーズを知ったんだよ」

「からかうつもりで教えたら、大事故だ」

「そんなこと言って、まほこちゃんもウブ男子ウォッチャーなくせに」

私たちはよく道端の男子をウォッチングしている。とても楽しい。

すれ違う男の子たちのあらゆる情報から、推測するウブ探偵コンビだ。そうやって私たちは仲を深めてきた。





< 67 / 182 >

この作品をシェア

pagetop