会長サマと、夢と恋。

「なんだか、懐かしいですよね。自分で言うのもアレですけど、結構似てません? 会長の字と」

「……ああ、似てるな」

わたしが指差した"岸 遥真"という字を見て、会長が柔らかく微笑んでいる。
……こんなふうに笑う人だって、最初に会ったときは思ってもみなかった。

『お前、もしかしてアホなのか』
最初に話した日に抱いた印象は、「最悪」。

だけど、

『俺がお前に、勉強を教えてやる』
『契約成立。……お前は今日から、俺の犬だ』

それから、奇妙な関係が始まって。

『廃部にならないよう、やるぞ。勉強』
『そいつ、毎日頑張ってるから』

……無愛想だけど、意外と優しいことを知って……。

『……俺はお前の、家庭教師、だからな。お前、生徒一号なんだろ?』

一緒に過ごす度、会長のことをどんどん好きになっていった。

告白をしたのも、誰かのために頑張りたいって思えたのもはじめての経験で。
何でもかんでも、「自分には無理」だと決めつけていたわたしを、岸会長が変えてくれたんだ。

……でも、わたしと会長を結びつけてくれていた関係のひとつ、「会長と雑用」という立場は今日で終わり。
そう思うと、無性にさみしい。

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