無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

強引にドアノブを引っ張り、ドアをこじ開けることに成功した。

柊木善は私の腕をつかんだまま。



「キスしたくなったら、俺の部屋においで」



振り返った私に、柊木善は誘惑するようにそう言った。

私の脳内は完全にキャパオーバー。

なんとなく下唇を噛んでしまう。



「そんなこと一生ありませんから」



私は冷静に柊木善の腕をどかし、逃げるように部屋を出た。

自分の部屋のドアを開け急いで閉める。

落ちつかせるように深呼吸をした。



自分の胸に手を当て……あまりの心拍数の早さに驚きを隠せない。


異性とあんなに近くで話したのなんて生まれて初めてだから、こんなにドキドキしているんだ。

あんなにかっこいい顔でささやかれたら誰だってドキドキするに決まってる。


誰とでもキスできちゃうようなふしだらな柊木善だからドキドキしたわけじゃない。


ーーー私はそう、自分に強く言い聞かせた。



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