バースデーカード
だから俺は頷いた。


編集作業をすべて請け負うことになった大池さんだけれど、その笑顔は穏やかだった。


次に感じた変化は、両親の会話の中でドナーという単語が頻繁に出るようになったことだった。


それがなんなのか、さすがに質問しなくてもわかった。


俺に会う臓器の話だ。


次の発作が起こる前に見つけて手術をしたいというような内容を、俺が寝たふりをしている間に行われていた。


そのくらい、今の俺は危機的状況だった。


死が目前に迫っている。


そう感じる息苦しさを感じることもあった。


このまま発作が起きて、そしてもう二度と目覚めることはないんじゃないか。


そんな恐怖を毎日のように感じるようになった。
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