バースデーカード
☆☆☆

「新は包丁を持ってたよな。たぶん。調理室から持ってきたんだろう」


あたしの前を歩きながら和樹は言う。


「そうだね」


返事をしつつも、首をかしげた。


確かに新は包丁を持っていた。


学校内で入手したとすれば、調理室くらいしか思い浮かばない。


だけど違和感が胸を刺激している。


「新は悪霊なんだよね? それなのに、どうして包丁なんかが必要なんだろう?」


感じていた疑問をそのまま口に出してみた。


「それは……わからないけど」


和樹も同じように首を傾げている。


悪霊なら、包丁なんて使わずに能力を使って相手を殺すことができそうだ。


あたしも勝手な妄想だけど。


「でも、実際に窓が開かなかったり、壊せなかったり、電話が通じなかったりしてるんだ。人間じゃない力を持っているんだと思う」


「そっか。そうだよね」


頷いてから、もしわざと包丁を使っているんだとしたら?


と、考えてしまった。


新はあたしたちが逃げるのを見て笑っているのかもしれない。


じわじわと、1人ずつ殺して楽しんでいるのかも。


そんなことを考えて、慌てて考えを打ち消した。


新はあたしたちの友達だ。


そんなむごいことするはずがない。


きっとなにか事情があって包丁を選んだんだろう。


悪霊のことなんて全くわからないのだから、そういう決まりでもあるのかもしれない。
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