恐怖ダウンロード
夢だって理解しているはずなのに、早紀を急ぐ気持ちが勝っているのだろう。


「大丈夫だって、今回も絶対に成功するから」


小声でそう言った時だった。


教室の中央から陸の悲鳴が聞こえてきて振り向いた。


「なにしてんだよ美紀! やめろよ」


陸は机の上に立つ美紀を必死で止めようとしている。


美紀は口を一杯に開き、顔を上に向けてなにかを飲み込もうとしている。


美紀の両手にはいっぱいのタバコが握りしめられていた。


「そんなもん食ったら死んじまうって!」


陸が美紀の体を机からひきずり降ろそうとする。


しかし、美紀はしっかりと踏ん張ってそこから降りようとしない。


ゴクゴクと喉を鳴らして、タバコを飲み込んでいるのがわかった。


その壮絶な光景に教室内のあちこちで悲鳴が響き渡る。


靖と愛子は呆然として美紀と陸の様子を眺めているだけだ。


「なにあれ……」


夢も驚いて唖然とした表情を浮かべている。


その様子を見てあたしは笑った。


「どう? すごいでしょう?」


自信たっぷりに言うと、夢がこちらへ視線を向けた。


「まさか……」


「そうだよ。《恐怖アプリ》に記入したんだよ。学校内でタバコを食べてしまうって」
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