人権剥奪期間
☆☆☆

3人で教室を出ると、内側から大志が鍵をかけた。


カチッというその音が、やけに大きく響くように聞こえてきてあたしは身を縮めた。


あちこちの教室から授業中の先生の声が聞こえてくる。


あたしたちがいた教室は3階の最も西側の教室で、出てすぐ横が階段になっている。


あたしたち3人は息を潜めて階段を折り始めた。


普段よりゆっくり、足音を立てないように降りて行く。


もしどこかで誰かと鉢合わせたら、その時は3人バラバラに逃げることになっていた。


まとまって逃げたら全員が捕まるかもしれないからだ。


今は授業中から誰かに見つかっても攻撃はされないかもしれない。


だけど、念には念を入れて警戒しておかないと、なにが起こるかわからなかった。


階段を一段下りるたびにシューズが床にこすれて微かな音を立てる。


それすらもうるさいと感じられる空間で、あたしたちはどうにか1階までやってきた。


そこまで来て一番前を歩いていた一が一旦立ち止まり、大きく深呼吸をした。


同じように空気を吸い込んでみると、自分が呼吸すら止めていたことに気が付いた。


一が振り返り、あたしたちの様子を伺う。


あたしと聡介はうなづいて見せた。


ここから先が難関だ。


食堂は1階の南側の端にある。


その間にあるのは保健室、化学質、美術室、木工教室など。


移動教室で利用する教室のほとんどがここにある。


そして今もあちこちの教室から授業を進める先生の声が聞こえてきているのだ。
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