人権剥奪期間
食堂にある時計へ視線を向けるとあと15分で昼休憩が始まろうとしている。


ここで見つかってしまったら逃げ道はない。


それこそ一網打尽にされてしまうだろう。


落ち着かない気持ちで時計を見ていると、5分後さっきの女性が紙袋に沢山のおにぎりとペットボトルのお茶を入れて持ってきてくれた。


「あ、あの、お金は」


一が財布を出そうとしたが、女性は「いらない」と、言い切った。


「これは私たちからのサービス」


そう言われて食堂の奥へと視線を向けると、複数の男性女性がこちらを気にしているのがわかった。


「いい? がんばって逃げ切るんだよ。たった一週間だから、絶対に大丈夫だからね」


女性があたしの手を強く握り締めていた。


その言葉に胸がジワッと温かくなる。


学校に来てからこんな風に気にかけてもらえたのは初めてのことだった。


あたしは大きくうなづき返した。


悪い人ばかりじゃないんだ。


絶対に逃げ切って見せると信じて。
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