人権剥奪期間
狩の時間
アナンスが流れて30分が経過していた。


保健室の窓から廊下の様子を確認しても、生徒の姿はひとりもなかった。


アナウンス通り、みんな真っ直ぐに帰宅したのだろう。


「1階だけでも確認してくるから、もう少しここにいてね」


先生はあたしたちに声をかけて保健室を出た。


「どうして全員帰宅させたんだろう」


ベッドに座っている花子が呟く。


今はカーテンを開け放っているから、その様子がよく見えた。


「そんなの、先生が俺たちに配慮してくれたってことだろ?」


大志が答える。


たぶん、そう考えるのが一番妥当そうだ。


「そうかな?」


花子は納得いかない様子で首をかしげた。


その様子を見ていると数学の先生の言葉を思い出した。


『今回の商品はなかなかレベルが高いな』


あの先生は確かにあたしを見てそう言ったのだ。


あたしのことを『商品』だと認識していた。


思い出して強く身震いをする。


先生だからっていつでも生徒を守っているわけじゃない。


こんな法律があろうがなかろうが、人を傷つける先生だっている。


だって、先生だって人間だから。


ロボットじゃないのだから、ストレスが溜まれば誰かに攻撃することだってある。


わかっていることだけれど数学教師に言われた一言は今でも胸に突き刺さっていた。
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