ちいさなことばをひろいあつめて【短編集】
 細く、長く弧を描く上限の月。

 まるで嘲笑を浮かべる口元のように歪んだ三日月が長い黒髪の少女と、その人に付き従う銀髪の青年を見下ろす。


 少女と青年は薄い月明かりを受け、まだ建設中の剥き出しの鉄骨が目立つ高層ビルの上から眼下にある煌びやかで冷たい色とりどりのネオンの灯りを見下ろした。


 赤、青、黄、緑、紫…


 眩くも現実味のない輝きを放つネオンの中に殊更深い闇が潜むのを見つける。

 その闇は人型に、いや人型に見せかけた『人ならざる者』に変化した。
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