ちいさなことばをひろいあつめて【短編集】
「そんな、嫌よ。
まだまだアメジストには教えてもらいたい事沢山あるもの!
辞めちゃだめ!!」

 あまりにも真摯に、自分の発した言葉を受け止めてくれるアウインにアメジストは胸を詰まらせる。

 ただ純粋に、駆け引き無く言葉通りに自分を受け入れてくれる彼女には頭の下がる思いだ。

 勿論アウインだけでなくほかの同僚のメイドたちにもその思いはある。

 言葉が足りなかったり気持ちを表現する手段が拙い者も多いがそれでもその本質は誰よりも分かっているつもりだ。


「…そうね、アウインには鱒のムニエルもローストビーフの作り方も覚えてもらわなくちゃいけないし…まだまだいなきゃ駄目だものね。」


 目じりを下げて笑うアメジストにアウインは胸を撫で下ろし壁に掛けられたカレンダーに目をやった。

 今日の日付には赤いインクで丸が書かれておりローズのものと思われる丸っこい可愛らしい文字で『歓迎会!』と書かれていた。
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