チョコ4つと意趣返し ~12年目の恋物語 番外編(3)~
「良かった! じゃあ今度のお休みに、一緒に買いに行かない?」

 そう言うと、亜矢が

「え? 誰に?」

 とグッと私の方に身を乗り出した。

 うーん。鋭いなぁ。

 でも確かに、亜矢とは中等部から一緒だけど、チョコ買う話なんて一度もしたことがない気がする。

 で、高校に入ってから友だちになった梨乃は疑いもせずに、

「お父さん? そういえば、志穂ちゃんって兄弟いたっけ?」

 と聞いてきた。

 だよねー。いわゆる恋バナ、私はいつだって聞き役だったもんね。

「ううん。一人っ子」

 だから、例年、お父さんと近所に住む従弟とおじさんに義理チョコを渡すだけ。

 だけど、今年は……。

 誰に渡すかを思い浮かべただけで、なんか気恥ずかしさでモゾモゾしちゃう。
 どうやら気持ちと一緒に身体も動いてたみたいで、気がつくと梨乃まで不思議そうに首を傾げてた。

 あーんー。

 最近、やっと本当に彼氏ができたんだって実感が沸いてきたところ。うん。もう、これが冗談とかじゃなく現実だって分かってる。

 ……だったら、やっぱり言わなきゃだよね。
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