望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


「気にしないでください!せっかくなんで、優希くんと一緒にいただきますね」


 アルバイト先の人たちは私の事情を知っていた。
 その事情とは、もちろん政略結婚をしたことである。

 言っておいた方が色々と都合が良いため、話したのである。

 私が結婚の話を口にした時、みんな同じような反応が返ってきた。たった一人、優希くんを除いて。


「はぁ……」

 私は一度、控室へ向かい、そこで待機していた。
 今日、優希くんと会うのを楽しみにしていたけれど、徐々に気が重くなるのがわかる。

 最後に会ったのは、結婚を打ち明けた時のため、正直顔を合わせづらい。


 それでも会いたいと思ったから、私はシフト変更を申し出なかったのだ。

 少しの間、ぼうっとしていると、控室のドアがノックされる音が聞こえてきた。


「はい」

 ノックに対して返事をすると、それが合図となってゆっくりとドアが開かれる。

 じっとドアが開かれるのを見つめながら、鼓動が速まり、緊張しているのが自分でもわかった。


 政略結婚の相手、郁也さんには愛する女性がいる。それは私にとっても好都合だった。

 彼に想い人がいるように、私にも──


「久しぶりだね、九条さん」


 想い人がいるのだから。

 開かれたドアの向こうにいた人物は、私が待っていた優希くんで。

 柔らかな笑みを浮かべている優希くんを見て、いつも通りの姿だと安心しながら、私も同じように笑顔で「お久しぶりです」と返すことができた。

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