望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。
一方で私は、2階にある3つの部屋を全て使っていいと言われていた。
と言っても、自分の部屋は1つあれば十分だし、あとは無駄に大きいダブルベッドのある寝室を使わせてもらい、1部屋は一切手を出していない空き部屋と化している。
郁也さんと共有しているのは洗面所にお風呂、リビングぐらいで、正直殆ど顔合わせをしていない。
けれど一応妻として、私は郁也さんのご飯だけは毎日しっかりと作っていた。
作ってはいるけれど、一緒に食べてはいない。
顔を合わせて食べるなどご飯が不味くなってしまう。
それは彼も同じだろう、一緒に食べることに対して文句はない様子。
「よしっ」
玄関を上がってすぐ右手のところにある洗面所で顔を洗い、焦げ茶色に染めたセミロングの髪を後ろで一つに束ねる。
スッキリさせたところで洗面所を後にし、リビングに繋がる廊下を移動する。
少し歩くと左手にはリビングへの扉があり、廊下のさらに奥──突き当たりには、地下への階段があった。
もちろん私は地下への階段に足を踏み入れたことはない。地下がどうなっているのか気にはなるけれど、郁也さんの住処に興味はない。
それに入るなと言われているのだ、平和に終わらせるためにも余計なことはしないでおく。
すでにこの関係が平和とは思えないけれど。
ついため息を吐いてしまう中、リビングへの扉を開けて中に入り、そこの脇にあるカウンター付きキッチンに立った。