イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
はあぁー。
今日何度目かわからない大きなため息。

結局シーフードドリアと冷蔵庫にあった炭酸水だけの夕食。
夜遅い時間だけにチーズとホワイトソースは胃もたれもするし、口直しに食べるはずだったイタリアンサラダも一緒に飲もうと思っていたアルコールもない。
なんだか寂しい夕食になってしまった。

それでも夕食を済ませ、一人暮らし用の小さな湯船に首まで浸かって温まっていると日付けが変わる時間になった。

「よしっ」
考えれば考えるほど大凶のような1日だったけれど、これで終わりと割りきろう。

『いくら悩んだって明日の日は来るわけで、先を見ないと始まらない』
これは亡くなった父さんの教え。
お寺の住職だった父さんらしい言葉だけれど、萌夏はこの言葉が好きで人生訓としている。

空腹が満たされて、温かいお風呂に入れて、ゆっくりと眠れる家がある。
そのことに感謝できる人間になれと育てられた。
だから、

「明日も頑張るぞ」
右手のこぶしを突き上げて、萌夏の長い1日がやっと終わった。
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