イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
運命は自分で決める

平石家

ホテルを出た後雪丸さんの運転する車に乗せられ、着いたのは大きなお屋敷。
立派な門をくぐって敷地内に入ったため、カメラにさらされることもなく車を降りることができた。

「ここは?」

随分敷地の広そうな大豪邸。
でも、どこかのホテルって感じではない。

「実家だ」
「って・・・平石邸?」
「ああ」
「それじゃあ、お父様やお母様がいらっしゃるのよね?」
「まあ、そうなるな」

ゆっくりと進んでいた萌夏の足が止まった。

「今更行かないなんて言うなよ。また抱え上げるぞ」
「そんなあ・・・」

さすがにマンションには行けないと思ったけれど、まさか実家へ連れていかれるとは考えなかった。
そもそも今回の件で遥は相当な痛手を負ったわけで、その原因でもある萌夏の存在をお父様とお母様はどう考えているのか。
以前お母様に会ったときには優しそうな良い方だなあと思っただけだったけれど、状況がこうなってしまったからには気持ちだって変わるかもしれない。

「ほら、行くぞ」
「でも・・・」

チッ。
しびれを切らした遥の舌打ちが聞こえ、グイッと腕をとられた。

「安心しろ。萌夏を家に連れて来いって言ったのは母さん達だ。さあ、行こう。みんな待っているから」
「ぅ、うん」

父さんが亡くなってから誰かに待ってもらうことなんてなかったな。


遥に腕を引かれながら少し歩き、玄関が見えてきたとき、
「萌夏さん」
わざわざ玄関先まで出てきていたお母様が、駆け寄って萌夏を抱きしめた。

「今までどこにいたの、心配したのよ」

え?

「母さん、話は入ってからにしよう」
「ええ、そうね」

こうして、初めて平石低におじゃますることになった萌夏。
緊張しながらお屋敷に足を踏み入れることになった。
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