イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
会社に戻るのももどかしく、車の中から雪丸に連絡を取った。

「すまないが、急ぎで調べごとを頼まれてくれ」

突然の申し出に驚いた様子の雪丸。
それでも1時間ほどで彼女の素性と住所、店を辞めた経緯を調べてくれた。



「彼女、何者なんだ?」
珍しく女性についての調査を依頼してきた遥に、雪丸は不思議そうに聞いてくる。

「ちょっとした知り合いだ」
「ふーん」

本当にそれだけ。
偶然かかわってしまったことと、事情も知らず彼女を責めるようなことを言ってしまった後悔の思いから気になっただけ。

「今日と明日は休みだからゆっくりすればいいが、変なことに首を突っ込まないでくれよ」
これは秘書としてではなく、友人としての言葉だろう。

「ああ、気を付ける」
遥だって、トラブルは避けたい。


そのまま車を走らせ彼女の住む会社の寮に向かうと、ちょうど外出する彼女の姿を見つけた。


この時の遥は何もするつもりはなかった。
まさか彼女が仕事ばかりか住む所も失おうとしているなんて知らなかったし、自分が彼女にマンションの部屋を貸すなんて言い出すとは思ってもいなかった。
ただ、天真爛漫というか無防備というかよく知りもしない男から食事に誘われついてきてしまう彼女が心配になったし、路頭に迷う寸前なのにそれでも強がっている姿が痛々しくて黙っていられなかった。
< 40 / 219 >

この作品をシェア

pagetop