イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
「どうしたんですか?考え事ですか?」
黙り込んでしまった遥に雪丸が声をかける。

「うん。お前との付き合いも長いなと思ってね」

中学生のあの日、困っていた遥を助けてくれたのが雪丸だった。
あれ以来、雪丸は遥の親友になった。

「遥とおばさんにはいくら感謝しても足りない。今こうしていられるのは二人のおかげだ」
秘書としての顔ではなく、遥の友人としての雪丸の言葉。

そもそも雪丸は母一人子一人の家庭で育っていて、遥と出会った当時は学校にもほとんど行けていなかった。
年齢を偽っていくつものバイトを掛け持ちし、必死に生きていた。

「それは、お前が頑張ったんだ。俺や母さんは手助けをしただけだ」

実際、遥を連れ帰った雪丸を母さんは気に入った様子だった。
頭の回転だって速いし、空気を読むのも上手い。
苦労をしている分向上心も強くて、魅力的な子に見えたんだろう。
すっかり意気投合し時々遊びに来るようになった雪丸に、母さんは学費の援助を申し出た。
雪丸も悩んだ末に申し出を受け入れた。

「私の時と彼女の場合では話が違うってわかっていますよね?」
仕事の顔に戻った雪丸。

「そうか?」
そう大して変わらないと思うけれどな。

「とにかく、信用しすぎないことです。油断すると昔のように身ぐるみはがされますよ」
「お前・・・イヤなことを思い出させるな」

萌夏はあの時のチンピラとは違う。
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