サプライズは素直に受け取って。
君の良く知ってる場所へ。
君の思い出の場所へ。
勝手に連れて行く事を許して欲しい。
彼女は車から降り、建物を見た瞬間に目を大きく見開き、此処がどこなのかすぐに察した。
君の目に僅かに涙がにじみ目が左右に揺れる。
僕の胸にもジンとくるものがあり、僅かに涙目になってしまったかも知れない。

「え?」

と、最初に言葉を発したのは彼女の方だった。

「ここ。
 今日のディナーはここに予約したから。
 四季ちゃんが大丈夫なタイミングで入ろう。」

四季ちゃんは信じられない状況に確認したいのか看板を見て、もう一度、目を見開いた。

(ごめん。僕はすべて知っている。)

きっと、四季ちゃんは喫茶店での出逢いが初対面だと思っているのだろう。
でも本当はずっと前から僕は四季ちゃんを知っているんだ。
だから、もっと頼って欲しいと、もっとわがままを言って欲しいと願っている。
今日はその事をちゃんと言葉で伝えようと思う。

「どっ、どうして?ここへ?」

「四季ちゃんのお祝いがしたいから、四季ちゃんが喜ぶかなと思ってこの店を選んだ。」

このレストランに沢山の思い出があるだろう彼女は、僕の返事が聞こえない程に狼狽えている。
身体が冷えてしまうから、そろそろ入ろう。
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