その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

今までほぼ来る者拒まずとはいえ、1度きりの関係しか持てなかった彼に未練があった女性はやはり大勢いたらしい。
私の目があろうとお構いなしにお誘いを掛けられている姿を連日見せられ、会話の端々から『あぁこの人とも過去に寝たんだな』と何度も目の当たりにする日々。

もちろん彼は『大事な彼女がいるから』と冷たく断っているみたいだけど、それとこれとは別。

徐々に彼に触れられるのが苦痛になり、キスも出来なくなっていった。好きだからこそ辛い。

今更過去のことで責めたって彼にはどうすることも出来ないとわかっているから何も言うことは出来ないし、それを理解して覚悟をして交際を始めたはずだったのに、まさかこんな風に過去の女性達に悩まされるとは思いもしなかった。

さすがに目の前で過去に関係があったと知ってしまった女性と一緒にいれば、心が否応なく悲鳴を上げる。


そんな私の変化に気付かないはずのない友藤さんは、C健を辞めると言い出した。

『どれだけもう今は無関係だとしても、俺が過去に関係した女と一緒のところ見るの、やっぱ嫌でしょ?俺だってもし朱音が今もスパークルで働いてたら嫌だし』

とはいえ、優秀な営業の彼をC健だって逃したくないだろうし、男性が恋愛のゴタゴタで職場を変えるだなんて現実的ではないことは私が1番分かっていた。

そうなれば私が仕事を辞めれば済む話だけど、それはそれでせっかく仕事も覚えて楽しくなってきたのに惜しい気がするのと、やはり彼が私の目の届かなくなったここで働き続けるのを耐えられそうになかった。

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