その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

奈美が私のためを思って開いてくれた合コンだけど、私は申し訳ないほど身が入らなかった。

約束の19時よりもかなり早く着いたため、近くのコーヒーショップで時間を潰してからレストランへ向かった。
私の格好を見るなり奈美が「お、いいじゃん。やる気じゃん」とうんうんと頷いていたけど、今の私は朝この服装を選んだ時のテンションと真逆で、なんならすっぽかしてしまおうかとすら思っていた。

さすがに幹事をしてくれた奈美に申し訳なさすぎて時間通りにレストランに来たものの、私は早くお開きになってくれと願いながら男性陣が取り分けてくれたピザを口に運んだ。

奈美が予約してくれたイタリアンレストランは、駅から5分ほど歩いたところにある隠れた名店らしく、一番奥まった半個室の席に通された。

店内は温かみのあるオレンジ色の照明で、20名ほど座れる大きなカウンターテーブルの隣には観葉植物が置いてある。右奥の小さな段差を上った先に6人掛けのソファ席が2つ並び、さらに奥に扉はないものの壁で区切られた半個室が2部屋あった。


奈美と同じ会社『ソルシエール』に勤める私以外のメンバーは、さすがアパレル勤務というだけあってみんなオシャレ。

女性陣は奈美と同じくモード系の華さんと、小柄でフェミニン系の凛さん。
2人とも合コンになんて来なくても男性は選びたい放題だろうに、もしかしたら私のせいで奈美に捕まったのだろうかと思うと申し訳ない。

男性陣はみんなスーツだけど、夏だからジャケットは着てなくてネクタイもしていない。
シャツの袖は捲られていて、クールビズが定着している。

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