2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~【リニューアル版】
番外編 山下専務の孤独
山下佳彦、35歳。


俺は…


水原社長に首を切られた。


「どうして解任されるのかわかってますね」


だと…


仕事を辞め、しばらくは家にいた。


貯金は十分過ぎる程あった。


朝からビールを飲み、何をする訳でもなくテレビをぼーっと見る。


会社にいた時と比べたら、何とも低堕落だ。


でも…


俺は…


本気であの子のこと…


なんて、今更言ってもしょうがない。


彼女とどう接したらいいのかわからず、ただ、毎日コピーを頼む。


その時、近くで見る顔が…


すごく可愛くて。


『ちゃんと鍵かけといてよ』


『…わかってる。今夜も遅いのか?』


『…ええ。残業になると思う』


パートに出てた妻が、俺が失業した瞬間に、そこの社員になった。


どうせ、俺とは…


顔を突き合わせていたくないんだろう。


今夜もホスト通いか…?


妻が男に金を貢いでるなんて情けない。
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