先生がいてくれるなら③【完】

夏も終わりに近づくと、大気の状態が不安定になる。


上空に寒気が入ってきて、都会の熱い空気と上空の寒気が盛大に喧嘩をする結果だ。



もうすぐ夏休みも終わると言うこの日も、夕方から徐々に雲行きが怪しくなり、夜には雨が降り出した。


急に強い風が吹き出したかと思うと、時折ゴロゴロと不穏な音が聞こえ始める。


その音は次第に大きくなり、稲光が不気味に光り、暗い夜空を走り抜けている。



──立花って、雷、大丈夫だっけ……？



自宅に持ち帰った仕事を片付けながら、考えることはやっぱり立花の事で……。


まぁ、案外気が強い所もあるし、大丈夫だろう。


仕事をしながらも、時折地響きを伴って鳴り響く雷鳴に、思わず顔を顰める。



──気が散る。



しかし、やってしまわなければならない仕事がある。


夏休みが明けてしまうと、毎日の業務に忙殺されてしまう。


休み中に終わらせてしまいたい仕事が山積みで、雷の音ごときに邪魔されるのはあまりにも癪だった。


俺は無理矢理集中しようと、目の前の書類を睨む。



──と、その時、稲光、轟音と共に、室内の電気が一瞬、チラチラと瞬いた。



「……あぁ、停電、か」