先生がいてくれるなら③【完】
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高峰さんから謝罪を受けた翌日の夕方、私は指定の時間、指定の場所へやって来た。
──大学病院の教授室。
ソファに座るように促され、目の前には藤野教授と光貴先生が座っている。
初めてこの部屋に通された時は死ぬほど緊張したけど……何度も訪れているうちに、緊張もほどほどになってきた。
とは言え、全く緊張しなくなったわけではない。
やっぱり教授を前にすると今でもとても緊張する。
「高峰さん、明後日が退院なんですね」
私がそう言うと、二人は頷いた。
「昨日の午後、高峰さんと話をしました」
二人は口を挟むことなく、私の話に耳を傾けてくれている。
「それで……高峰さんから、謝罪を受けました」
私がそう口にすると、教授と光貴先生の表情が緩むのが分かった。
光貴先生は「そう、良かったですね……」と言って優しく微笑んでくれる。
私はコクリと頷き、話を続けた。
私はバッグから例のボイスレコーダーを取り出し、テーブルに置く。
「これも、高峰さんから『好きにして良い』と言われて……これは私が内容を消すことにしました。それと……」
ボイスレコーダーの事は二人も知っていることだけど、キスの動画を撮られたことは二人には黙っていた。
私は恥ずかしいこともあってそのことを言うかどうか迷ったけれど……やはり報告しないわけにはいかないと思ったのだ。