先生がいてくれるなら③【完】
「若い方の先生はなるべく私に姿を見せないようにしてたから私もなかなか気付けなかったけど……イケメンって罪よね」
「えっ、どうしてですか?」
「ギャラリーが放っておかないから」
「……あぁ、そうですね、なるほど」
こっそり高峰さんを窺っている光貴先生を、恐らく患者や看護師がキャーキャー言いながら見てたに違いない。
それで高峰さんに見つかってしまった、と……。
「お二人に、お礼を言っておいて。どうせ私の前には出てこないでしょ?」
「まぁ、多分そうですね……」
「……あなたって、実は “人タラシ” なのね」
「……は?」
「じゃなきゃ納得いかないわよ」
高峰さんはむくれたような表情で私を睨んだ。
えっと、私は誰もたらし込んだ覚えは無いんですけど……?
「ねぇ、携帯出して」
「え? あ、はい……」
求められるまま私は自分の携帯をポケットから取り出した。
「仕方がないから、連絡先交換してあげる」
「えっ?」
「……いらないかしら」
「あっ、あっ、い、いりますっ!」
私は慌てて携帯を操作して、高峰さんと連絡先を交換する。
これで、きっとこの先も彼女と繋がっていられる、そう考えると少し嬉しかった。
高峰さんも少しはそう思ってくれているだろうか……。