君に伝えたかったこと

ただいま!

その晩、さおりは予定していた時間よりも、だいぶ遅れて美貴恵の家にやってきた。

「あー疲れたー。帰国したらしたで、やることも多くてさー。はい、これ美貴恵のお土産」

帰国の挨拶もそこそこに、紙袋を差し出す。

「ありがとう。でも、ただいまくらい言いなさいよ」

「あれ?電話で言わなかったっけ?」

「そういう問題じゃないの」

急にさおりは美貴恵のほうに向きなおった。
すると敬礼のポーズを取りながら

「ただいま無事帰国いたしました!!」

とひとこと。

あっけにとられている美貴恵をよそに、すたすたとバスルームへ向かうさおり。

「シャワー借りるねー」

何回も美貴恵の家に来ているさおりにすれば、まさに勝手知ったる他人の家。
自由奔放に振舞える空間に違いなかった。 

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