君に伝えたかったこと
第八章

戻らない時間

都内、某編集部

刷り上った情報誌を真剣な表情でチェックする芳樹と紗江。その横では大志がパソコンの画面を覗き込んでいる。

「この表紙の写真だけど、もう少し余白が欲しいかな。特に上の部分」

そう言いながら紗江は赤ペンで大きな丸を書く。

「たしかに、これだともう一点写真を入れるか、文字を増やさないとバランスが悪いか。

「うん」

「そうなると、今の画像は構図的に無理があるから違う写真・・・。おい大志この写真の別アングルは?」

「探してそっちのパソコンに送りますから」

三人は締め切りを前に深夜の編集部で黙々と作業を進めていた。
大志が持ってきた仕事が、いよいよ大詰めを迎え、最後の作業に入っていたのだ。

紗江のプランニング、芳樹の編集、大志の写真。
それぞれの役目を的確にこなした2ヶ月間。

ようやく手掛けた雑誌も完成に近づいてきたことで、細かいチェックと修正を毎日繰り返していた。
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