君に伝えたかったこと
終章

これから

美貴恵を送った後、芳樹はやり残した仕事を片付けに事務所へと戻った。

電気も消え、誰もいない事務所。

部屋の明かりをつけ、自分のデスクへ座るとパソコンのモニターに一枚のメモが貼り付けられていることに気づく。

紗江からのメッセージだった。

「芳樹へ 

来月から違う会社へ転職が決まりました。
地方なので、お手伝いできなくなるけどごめんね  紗江」

可愛いイラストが添えられたメモ。

芳樹はすぐに紗江を電話かける。

「もしもし」

「はいはい?」

紗江は少し酔っぱらっているようだった。
電話の向こう側は騒がしく、きっとどこかのお店だったのだろう。

「あのさ、こういう大事なこと、なんで急に言うワケ? おまけにメモって」

「だって、芳樹は事務所にいなかったじゃん。大志君にはちゃんと言ったよ~」

「そういう問題じゃなくてさ。だいたいどこのどんな会社に行くんだよ?」

「知りたいの? じゃあ、次のお手伝いって一週間後だよね。その時に話すよ。今、送別会中だからさー。またねー」

そう言って、紗江は電話を切った。

(なんだよ、紗江のヤツ・・・)

それぞれの未来が少しずつ変わり始めていた。

紗江が残したメモを静かにはがし、パソコンの電源を入れる。
誰もいない事務所に、キーボードを打つ音だけが響く。
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