冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
 それは瑠衣と暮らそうと思っていた、アメリカの家の間取りだ。彼女がいなくなった今俺には必要のないものだ。

「悪いけど……そちらで処分してもらえますか。申し訳ない」

 そう言い残し歩き出す。

 全部こうやって日本においていこう。引きずるなんて俺らしくない。

 そう言い聞かせている俺にバーテンダーが声をかけた。

「あの、またお待ちしています」

 振り返るとばつが悪そうな表情を浮かべていた。きっと声をかけるかどうか迷った上で、それでもかけてくれたのだろう。

「はい。また、ぜひ」

 アメリカに行く前に一度は顔を出そう。そのときには瑠衣との最後の思い出に浸ろう。

 そうやって時間をかけて、思い出をすべて日本においていこう。


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