涙、滴り落ちるまで
「瑠依!?」

「……今は、考えてる暇はない。僕に語りかけてくる彼が悪霊だったとしても、彼しか……あの悪霊の浄化の仕方を知らないんだ……もし、皆を傷付けるような真似をしたら……僕は、許さないけど」

『……賢明な判断だ……傷つけないようには、努力するさ』

次の瞬間、僕の意識は途切れた。



「……瑠依!」

誰かが僕の名前を呼ぶ声で、僕は目を覚ます。透が、心配そうな顔で僕の顔を覗き込んでた。

「……大丈夫?」

僕は体を起こしながら、「大丈夫」と答える。

「なら、良いんだけど……瑠依、悪霊を浄化してすぐに意識を失って……」

そんな言葉を聞きながら、僕は辺りを見渡す。

……そっか、僕……悪霊と入れ替わって……それから、記憶がないんだ……。

「……お前、やっと目が覚めたのか」

聞き覚えのある声がして、声がした方に顔を向けた。

そこには、ライラ様と胸辺りまで伸びた深い青色の髪に薄い水色の目の、僕がサーカス団にいた時に着ていた衣装に似た服を着た男の子がいた。

「私が、ずっと瑠依の中にいた悪霊の彼と瑠依を分裂させました……って、いつの間に……」

ライラ様は、いつの間にか消えていた、男の子がさっきまでいた場所を見つめて驚いた顔を見せる。

「……彼を放っておいたら、どうなるか分からないな」

ライラ様の呟きに、透はそう呟いた。
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