涙、滴り落ちるまで
「……静瑠……」

「紫乃も目を覚ましたようだな。無事で何よりだ」

僕の近くで体を起こす紫乃を見て、静瑠は優しく微笑む。

……そういや、静瑠も感情が豊かになったよな。

「そろそろ、俺は戻ろうと思う……紫乃、またな」

次の瞬間、静瑠の姿は消えていて、床にキーホルダーが落ちた。それを、ライラ様は拾うと「私が、瑠依の呪術を維持していました」とキーホルダーを僕に差し出す。

「……ありがとうございます」

ライラ様にお礼を言ってからキーホルダーを受け取ると、僕はキーホルダーを私服のポケットに入れた。

僕と紫乃が帰ろうと靴を履いて外に出ると、ライラ様は「2人とも」と口を開く。

「瑠依、紫乃……ありがとうございました。おかげで、未来を変えずに済みました……前世の瑠依たちの記憶を書き換えておきましたので、ご安心を……今日は私が地上に送りますね。お疲れ様でした」

ライラ様はそう言って、僕らに杖を向ける。次の瞬間、僕の視界は真っ白になって気が付いたら僕の家の前で立ってた。

「……もう、こんな時間か……僕、そろそろ帰ろうかな……あ、カバン……瑠依の部屋に置いたままだ……」

空を見上げてみれば、さっきまで明るかった空はもう暗くなりかけている。

「……その方が良さそうだね」

紫乃の言葉に、僕は頷いた。
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