君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「あーあ。学校来られなくなっちゃうなー」


 本当はもっと早く入院しなければならなかった。

 だけど病院が嫌いな俺は、いつも通りなんでもない日々を送りたかったから、必死に拒んだ。

 両親もそんな俺を最初は説得していたけれど、俺の意思が頑なだと知ると強くは言わなくなった。

 たぶん、もう好きにさせてやろうって思ったんだろう。

 死ぬまでのあとちょっとの時間を、俺の自由にさせてやろうって。


「……栞ちゃんのこと、どうすんの」


 へらへらしていた俺だったけれど、その名前が出てきたことはさすがに顔をこわばらせてしまった。

 俺は図書室がある方を見た。

 確か今日も栞は図書委員の仕事をしているはずだ。

 俺と栞が繋がった、始まりのあの部屋で。


「なんで栞が出てくんの」


 素っとぼけて俺は言う。

 「栞とはただのクラスメイトで、それ以上でもそれ以下でもなんでもないんですが?」と見せるために。

 ――しかし。


「あの子、お前のこと好きだと思うんだけど」


 悟が予想外の発言をしてきたので、俺は驚かされてしまった。

 いや、それはないって。

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