君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 私は他人に対してすぐに身構えてしまう。

 今は笑顔で話しかけてくれてるけれど、本当は私のことをどう思っているんだろうって。

 そんな気持ちがきっと態度に表れていたんだと思う。

 みんなは私のことを、「ひとりでいたい人なんだ」って思ったらしくって、段々話しかけられる頻度は減っていった。

 そう、だから私がひとりになっちゃうのは自分のせい。

 クラスに友達が欲しいなあって思うことはもちろんあるけれど、それよりも人と関わるのが怖いっていう気持ちの方が大きくて……。

 だから授業以外の時間、私は本の世界に入り込むしかなかったんだ。


「昼休みにバスケするやつ~!」


 ひと際大きな声が聞こえてきて、私の意識は再び現実世界に引き戻された。

 思わず声のした方に顔を向ける。

 あ、また樹くんだ。

 クラスメイトの七海樹くん。

 髪の毛を明るい茶色に染めていて、目鼻立ちもすごく整っていて、とてもかっこいい男の子だ。


「やるやる!」

「私もっ」


 性格は明るいけれどどこかマイペースで、つかみどころのない感じが魅力的だ。 

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