君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 そしてコートの中へ入ると、悟くんはすでにバスケットボールを持って男子の方へと戻っていた。

 ――なんだったんだろう。

 悟くんは何を言おうとしてたのかな。

 私に対して、嫌なことを言おうとしているようには見えなかった。

 そもそも、中学生の時だって一緒に居た時はとても優しかったんだ。

 ラブレターを見た時の悟くんの言動の方が、いまだに信じられないくらいに。

 でもとても言いづらそうにしていたなあ。

 なかなか言えないことなのかな……。

 何を言うとしていたのか見当もつかなかった。

 悟くんのことが気になって上の空でバレーボールに参加しているうちに、体育の授業は終わった。

 男子は撤収が早くて、私が体育館から出る頃にはすでに悟くんの姿は見当たらなかった。

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