私があなたを殺してあげる
 ドラッグストアに行くと、河名さんがレジのところにいた。

「こんばんは、河名さん」

「おおっ、杏子ちゃん。今日はどうしたん? 早いやん」

「うん。仕事休みやし、なんかおなか空いたなって」

「そうなんや。智明くんなら今、休憩してるで」

「えっ? 智明? 今日は休みじゃないんですか?」

「ああ、うん。そうやったんやけど、体調も戻ったから働きたいって言って、来てるで」

「そんな・・・ 本当に体調戻ったんですか?」

「本人はそう言ってたけど・・・」

「休憩室ですか?」

「いや、裏ちゃうかな?」

「そうですか」

 私はそれを聞いて、急いで店の裏に回った。

 するとそこには、壁に手を付き、えずいている智明がいた。やっぱり体調は戻っていなかった。


「智・・・」

 私が智明に声を掛けようとした時、♪♪♪♪♪と、智明のスマホが鳴った。


「はい、もしもし。ああ、すいません。はい、はい、わかってます。今月末までには必ずお返しします。はい、はい、本当に申し訳ありません。はい、また連絡させていただきます。はい、失礼します」

 智明は電話を切ると、ぐったりと肩を落とす。

「智明・・・」

 私はそんな智明の姿を見て、声を掛けるというより、声が漏れた。すると智明は顔を上げて、

「杏子・・・ どうしたん? ビールか? いつものやつならさっき補充したからあるで」

 智明は咄嗟に表情を変え、いつものように笑う。


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