私があなたを殺してあげる
「河名さん、あの若い子は誰?」

「ああ、一昨日から働いてくれてる浅尾くん」

 河名さんは持った商品を陳列棚に並べながらそう答えた。


「浅尾くん・・・?」

「若いのによく働いてくれて助かってるよ」

「ふ~ん、そうなんだ・・・」

 大学生くらいの子って、あまり働きが良くないイメージだけど、それは偏見かな。

 私は自分が持っていた若者の感覚に少し反省する。


「河名さん、今日もいつものある?」

「あるよ。杏子ちゃんのためにちゃんと入荷してある」

「ありがとう」

 いつものというのは、私がお気に入りのビールとおつまみ。それが品切れになると私が悲しむと思い、河名さんはいつも切らすことなく補充してくれているのだ。

 私はお気に入りのビール6缶セットとおつまみ、あとはお弁当とチョコレートなどを買い物かごに入れた。


「じゃあ河名さん、また来るね」

「うん、いつもありがとうね」

 河名さんはニコッと笑みを浮かべた。その笑顔はいつも通り。

 その笑顔がいつも私の心を落ち着かせてくれる、まるで父親に見守られているようで。
父親から絶縁されている私にとって、河名さんは本当の父親のような存在だった。


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