私があなたを殺してあげる
 えっ? なに? 今笑った? 
 いい年の女がこんな物を買って、おっさんかよってこと?


「なんですか?」

 私は少し不愛想にそう尋ねる。


「あっ、すいません。さっき店に入って来られた時と、今の立ち振る舞いにすごく差があったもので」

 そっちのこと?


 確かに入って来た時は逃げるように入り、今は胸を張って大人ぶっている。
さっきの汚名を返上しようとムキになっている。
私が取っている行動はまるで子供だ。

 そう考えると、私はカァーッと顔が赤くなる。


「138円のお返しです」

 私はお釣りを受け取ると、買い物袋を持って、そそくさと店を出て行った。


「何よ、何よ何よ! ・・・私は何をやってるのよ!」

 私は大学生の男の子相手に、何を張り合おうとしているのか。行き場のない恥ずかしい気持ちに地団太を踏む。


「フッ・・・」

 しかし私は、何故かその時笑いが出た。


 私、さっきまですごく落ち込んでいたのに、こんな風に見栄を張るんだと、恥ずかしいと思えるんだと、まだ笑えるんだと。


「あの子、失礼な子」

 なんだか浅尾くんの存在に救われた。私まだ、大丈夫みたい。

「よ~し、じゃあ今度は私が浅尾くんをからかってやるんだから」

 私は店の外のベンチに腰掛けると、買ったビールを取り出し、蓋を開け、一気に喉へと流し込んだ。


「ビールを飲みながら、ここで待ってやる」

 私は浅尾くんが仕事を終えるのを、ビールを飲みながらここで待つことにした。


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