悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
「素敵な魔術ね。でも薔薇を始め、命あるものはやがて枯れて散ってゆくからこそ美しいのだとも私は思うわ」
私はレオの薔薇よりももっと美しいレオを見つめて妖艶に笑って見せる。
「ふっ。そうだな」
そんな私を見てレオは優しく私に笑った。
本当にたまに見せるこのレオの優しい笑顔も私は大好きだ。
「それにエマは永遠の美しさよりも一瞬の美味しさ、だな」
レオは楽しそうにそう言うとパチンと指を鳴らした。
すると目の前にテーブルが現れ、その上には美味しそうなチョコレートが並べられてあった。
「よくわかっているじゃない。ちょうどお腹が空いていた頃よ」
目の前に現れた美味しそうなチョコレートに私は思わず目を
輝かす。
小腹が減っていたのでレオの良いタイミングに感動さえもあった。
「このチョコレートには食べた人を幸せな気分にする魔術を込めているんだ」
私の様子を横目にレオがチョコレートを一粒手に取る。
「そう。食べさせてね?レオ」
「わかってる」
私はそんなレオににっこりと微笑むとレオは無表情に私を見つめた。
私は基本自分からものを食べない。いつも恋人たちの手から食べている。
初めこそレオはこのことを心底嫌がり、拒んでいたが、今ではそれもなくなった。慣れてしまったのだ。
レオが私の口へチョコレートを運ぶ。
私はそのチョコレートを迎え入れ、レオの指を舐めた。