悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。





「まずは今までの非礼を謝罪させて。今まで本当にごめんなさい。私はアナタに酷いことをしてきた」

「…」


私はリアムに真剣な表情で誠意を込めて心から謝罪をした。リアムはそんな私を未だに甘い笑顔で見つめたままなので何を考えているのかわからない。


「今日をもってアナタを解放するわ」


何を考えているのかわからないリアムを私は真っ直ぐ見つめる。


「…かい、ほう?」


するとリアムはにっこりと私に笑ってみせた。瞳の奥が笑っていない笑顔で。


「また、それを言うの、エマ」

「え?」

「僕はエマから解放されることなんて望んでいないよ」


仄暗い笑みを私に向けるリアムの言葉に理解が追いつかない。

何故?私を恨んでいるのに解放を望まない?
私から解放されれば王子様に戻れる。愛していない女を愛しているフリなんてしなくていい。
ここじゃないどこへでも行けるというのに。
それに、また、とは?


「リアム。私は本気よ。アナタに酷いことをしたと心から思っているし、アナタをもう私から解放したいの。アナタを試している訳じゃない。アナタの王の首ももちろん狙わないわ」


リアムはきっと私が信じられないのだろうと私の言葉をリアムに信じさせる為に必死にリアムを説得する。


「私のことを恨んでいるでしょう?もうそんな人間に愛を囁く必要なんてないのよ」


これだけ言えばさすがに察しのいいリアムなら全てを理解してくれるだろうと私は言い切れたことに安心しながら皮肉げにリアムに笑ってみせた。







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