悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
「アナタはもうあの時のように権力も魔術の力もない。そんなアナタが僕たちを思い通りに動かせるとでも?」
くすりと不穏な空気を纏いながらリアムが私に笑う。
「さっきも言ったね?僕には権力がルークには知識がレオには魔術がある。僕たちはあの頃のアナタみたいにアナタを縛れる力を持っているんだよ?」
「…」
何も言えない。全てリアムの言う通りだからだ。
「僕の権力でエマがもう二度と逃げられないようにアナタの為の大きな宮殿という名の檻を用意した。ルークの知識でアナタが絶対に逃げられないシステムを考えた。そしてレオの魔術でそれを現実のものへと変えてみせた。エマ、今度はアナタが僕たちに囚われる番だ」
仄暗い笑みをリアムが浮かべる。
ルークもレオも同じように笑っていた。
もう、逃げられない。
私は無力なのだ。
「さあ、帰ろう?エマ。僕たちの宮殿へ。もう二度と僕を捨てないでね?」
最悪の状況に絶望しているとルークが私の右手を優しく掴んだ。
「エマ、もう二度と俺の前から消えないでくれ」
左手はレオが力強く掴む。
「もう二度と逃げないでね?僕のエマ」
そしてリアムは私の左肩に優しく触れた。
彼らに特に意図はないのかもしれない。だが彼らに触れられた時私は思った。
あぁ、捕らえられてしまった、と。
もう逃げられないのだ、と。
そして彼らがこの部屋に現れた時のようにこの部屋いっぱいに光が溢れ始めた。