天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 これがなかなか重労働で、戻ってきたナースの中には「腰が痛い」と顔をしかめる人もいるくらいだ。


 それから三十分後。陽貴さんが病棟に顔を見せた。


「お疲れさまでした」
「うん」


 おそらく眠っていない彼だけど、その目は鋭い。


「患者さん、助かったとお聞きしました」
「かなり厳しい状態だったけど、なんとか。でもまだ気を抜けない」
「はい」


 脳を大きく損傷したあとは、浮腫や出血などに進展する例が多い。
 それを食い止められなければ、最悪死が待っている。


 その日、夕方まで勤務だった陽貴さんと一緒に彼の車で帰宅することにした。

 昨夜はまったく仮眠できなかった上、片山さんのオペ後も予定されていた下垂体腺腫の手術をこなした彼はさすがに疲れている。

 私がキッチンで食事を作っている間、ソファで眠っていた。

 今日の食事は彼の好きなチキン南蛮。
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