【完】セカンドマリッジライフ

顔を上げた雪乃の大きな瞳が戸惑っている。 それでもゆっくりと口角を上げて笑顔を取り繕ろうとしたんだ。 …そんな無理をしている笑顔好きじゃない。

君にはいっつも屈託なく笑っていて欲しいものだ。 しかし無理に笑顔を作らせているのは俺のせいだ。

「…でもせっかく北海道に来てくれたんだし。 ひとりぼっちじゃあ寂しいじゃない。」

美しい顔と同じように美しい心を持っている。 俺は君が大切で、君以外を大切にはもうしたくない。 その不器用な愛情を上手に伝えられなかった。

「雪乃が嫌じゃなかったら…一緒に行こう。 のえる富良野の観光をしたいらしくって…
でも雪乃が嫌だったらこの話は断る。 人の予定も訊かずに勝手にあいつがやって来たんだ」

そんな言い方をすれば雪乃が断れないと俺は知っていた。 大切にしたいと思いながらも傷つけてばかりだ。 それでものえるの強引さに抗えない自分の情けなさが恨めしい。

結果雪乃に無理ばかりさせているんだ。 ふにゃあと目尻を垂れ下げた雪乃が力なく笑って、こくりと頷いた。 俺は全然彼女の気持ちを考えていない無神経な男だった。

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