俺様幼馴染は素直になれない!
上杉くんの隣で笑ったり、驚いたり、いつもの私とは違う感じがした。
上杉くんは私が無表情なのを心配して、水槽にいる変な魚に声をかけたり、私を楽しませようとしていたからだ。
それから、上杉くんと水族館の中を見まわったあと、グッズコーナーを見た。
販売グッズのぬいぐるみをもって声真似したりしていた。
グッズコーナーを回ると、可愛いイルカのキーホルダーがあった。
「可愛い。これ」
私は独り言を呟いて、手に取った。
「僕買っておこうか」
それに気づいて、私の隣に来て、手に取ったものを見た。
「いや、いいよ。大丈夫。見るだけでいいから」
私は手に取ったものを元に戻して、違う場所を見て行った。
そして、30分程グッズコーナーを見た後、水族館を後にした。
14時頃、グッズを見終えたら、私たちは水族館を出た。
出た後、上杉くんは私に声をかけてきた。
「これ。あげる」
上杉くんは大きい魚のぬいぐるみを私に渡してきた。
「これって…私が見ていたぬいぐるみ」
私は目を丸くして、上杉くんを見る。
「そう。やっぱりほしかったやつだよね。あと、これ。イルカのキーホルダー」
喜ぶかなと言わんばかりに半信半疑で私をチラッと見てから、上杉くんは私に伝えた。
「……ありがとう。ほんと嬉しい、嬉しい」
私はイルカのぬいぐるみを力強く握りしめて、上杉くんにか細い声で言う。
「よかった。喜んでくれて、僕も嬉しい」
本当に嬉しそうにしていて、私も笑みが零れた。
上杉くんは恥じらいなく、私を見て笑って言ってくる。
こういうところ、すごいと思う。
私は上杉くんに関心していた。
「…うん」
大きなイルカのぬいぐるみを握りしめて私は、上杉くんの話を聞いて、返事をした。
私は上杉くんが素直な姿に口元を緩めた。
「私も楽しかった。久々にこんなに楽しかったよ」
私は笑みを浮かべて、上杉くんにワンテンポ高めに声を発した。
「改めて、僕も楽しかったよ。ねぇ、相波さん。僕、好きだよ、相波さんのこと」
上杉くんは大きい澄んだ目で急に私の目を見て、一歩を踏み出して私の方へ近づいてきた。
「…ありがとう。でも…私は瑠翔が好きだから」
私は少し間を開けて、返事をした。
「でも、瑠翔先輩は相波さんのこと恋愛感情として見てないよ」
返事をすると、上杉くんは瑠翔のことを言ってきた。
だけど、好きなのは私の心の中で決まっているのだ。
「…分かってる!」
私はいつもより大きめな声で声を発した。
それに上杉くんは目を丸くしていた。
そりゃ、びっくりするよね。
いつも大きい声なんて出したことないし。
「…そうだよね、それでも瑠翔先輩が好きなんだよね」
申し訳なさそうに上杉くんは私に言って、悔しそうに口を尖らせていた。
「……っごめん。片思いでも諦められないから」
そんな上杉くんの姿に涙が出そうになった。
こんな私を好きになってくれるなんて…
「……決意がもう固まってる相波さん、初めて見た。それほど彼のこと好きなんだよね。でもこれだけ覚えておいて。相波さんは今幸せ?」
上杉くんは優しい。
優しすぎるほど、優しい。
上杉くんは、性格も顔も他の人の何倍もいい人だ。
だけど、私はやはり瑠翔じゃなきゃいけないんだ。
「うん、幸せだよ」
私は満面な笑みで微笑む。
幸せ。
瑠翔が私を好きじゃなくても、好きだっていう気持ちが私を幸せにしている気がする。
諦めなくちゃいけないけど、今はこのままでいたい。
「幸せじゃなくなったら、僕いつでも結愛ちゃんのこと奪いに行くから」
上杉くんは私の笑みを見て、首を傾けながら私を見つめて言った。
それからというもの、告白されたのに何事もなかったように上杉くんは接してくれた。